やまのべ焙煎所は、 エスプレッソマシンのプロフェッショナル「大一電化社」が手がける直営焙煎所です。

“つくり手”として届ける価値とこれからの展望|ファウンダー・代表取締役 上田 隆

一杯のコーヒーの背後には、それを支える人の数だけ物語があります。
やまのべ焙煎所では、焙煎士やスタッフ一人ひとりの手仕事と情熱が、日々の味わいをつくり出しています。
本インタビュー企画では、焙煎所のメンバーにスポットライトを当て、その歩みや想いをお届けします。
今回は、運営元である大一電化社の取締役でやまのべ焙煎所のファウンダーである上田隆さんに、焙煎事業を始めるきっかけや今後の展望について伺いました。

焙煎所をつくろうと思った理由

私たちの企業理念は「社会課題の解決に寄与する」、ブランドパーパスは「コーヒー文化の発展に貢献し、カフェ業界にとってなくてはならない存在であり続ける」ことです。
つまり、カフェ業界に本当に必要とされる存在でありたいと考えています。

ありがたいことに、当社には新規開業に関するご相談を多くいただきます。中でも多いのが「どのエスプレッソマシンを選べばいいか?」という質問です。しかし、本質的には「事業を成功させたい → そのために美味しいコーヒーを提供したい → そのために適切なエスプレッソマシンを選びたい」という流れのはずです。

ただ、どれだけ優れたマシンを導入しても、豆そのものがオーナーの美味しいと思える味でなければ意味がないし、マシンを使う技術も伴っている必要があります。

焙煎所オープン前、当社は豆以外は全部揃っていました。もちろん商品として取り扱ってはいましたが、イタリア・ナポリの焙煎工房から空輸した「クィート」の豆や、国内の高品質な豆など仕入れに頼っていた状況でした。誰かが作ったものを提供するだけでオリジナリティはなかったのです。そこで、自社で焙煎所を持ち、「これは私たちの豆です」と胸を張って言える体制を築きたいと考えました。

さらに、焙煎を手がけることで、商流の上流=“つくり手”としての立場に立てることも大きな意味を持ちます。これまでの私たちは“仕入れて売る”という立場でしたが、“一から作る”という体験を通じて、お客様により本質的な価値を届けられるようになったと感じています。

焙煎所立ち上げの経緯と成長

焙煎所がオープンしたのは2019年です。

どんなビジネスでも、新規事業をおこすとき、人材、機材、材料の調達、見込み顧客のめどがついていないといけないですよね。当社は機械メーカーですし、当時コーヒー業界では地位も確立しつつあって、人材も仕入れルートも揃っていました。なにより、当社のお客様は新規開業される方がほとんどのため、マシンのご提案と一緒に豆のアプローチもすることができる。焙煎所をやる条件は揃っていました。

実は、この立ち上げの計画は直前まで知らなかったんです。専務がものすごいスピード感で動いてくれ、助成金もとって私のもとに打診をしてくれました。前述の通り、あとはやるだけの状態だったのでゴーサインを出しました。

ゼロからのスタートでしたが、6年たった今では年間で買い付ける豆量は35トンになりました。今後も商談が控えており、50トン、60トンとさらなる拡大が見込まれるため、本社の敷地内に新たな焙煎所の建設も計画中です。

現在の焙煎所はエスプレッソマシンのショールームと兼用しており、騒音や動線の面で課題がありました。今年まさに建設中の新しい焙煎所では、焙煎機能を独立させ、ガラス越しに見学できるような設計になる予定です。

BtoBとBtoCの戦略

今後の戦略として、BtoBを主軸にしつつ、BtoCにも注力していきたいと考えています。

BtoBでは、大口契約が取れれば大きな成果が期待できますが、契約が終了すると売上が急減するリスクもあります。そのため、新規開拓を継続的に行うことが重要です。

一方、BtoCは売上規模や利益率の面では控えめですが、ブランディングという観点では非常に大切です。今はまだ個人のお客様に「やまのべ焙煎所」が知られていないと思いますが、「やまのべ」という名前を見たら、コーヒーが想像できて、そこのコーヒーは美味しいと思ってもらえる。そのようにブランドとして想起してもらえるようになったら、法人取引にも好影響をもたらすと考えています。

お客様との関係性とアフターサポート

私たちは、単にコーヒー豆を販売するだけでなく、どうすればその豆を最も美味しく抽出できるかまでサポートしています。お客様の設備や抽出方法に合わせて焙煎を調整したり、マシンの使い方を技術部門が直接指導したりする体制を整えています。

さらに、導入後1年、2年が経過した後も、マシンがベストな状態で稼働しているか、消耗品の交換時期などを含めて、継続的に情報提供やアドバイスを行っています。ここまで一貫したサポートができる焙煎所は、国内でも珍しいと自負しています。

課題と今後の展望

現時点での課題は、BtoCの売上がまだ十分に伸びていないことです。商品開発やECサイトの改善など、今後取り組むべき課題は多くあります。

また、既存のお客様との関係性をさらに深めていくことも重要です。一度購入してくださったお客様が、3回、4回とリピートして買い続けてくださるような施策を行い、お客様に満足いただけるようにできればと思います。

最後にメッセージ

「やまのべ焙煎所」は、単にコーヒー豆を提供する場所ではありません。お客様の理想の一杯を実現するため、機械・技術・焙煎・アフターサポートまで、すべてを一貫して支える体制を整えています。これが、私たちの最大の強みです。

「美味しさ」に唯一の正解はありません。お客様一人ひとりが「美味しい」と感じる味に、どれだけ寄り添えるか。その姿勢こそが、私たちの価値だと信じています。

ぜひ一度、サンプルをお試しいただき、ご検討いただけたら幸いです。

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